階級社会?

Korobokkuru2005-08-02

日本で「一億総中流」の幻想が崩れるのに合わせて、アメリカの階級分断を指摘する話を時々耳にする。アメリカで貧富の差が拡大しているのだから日本でもそうなって何が悪いのだ、というロジックを構造改革賛成派は用いる。対して、平等志向の強い守旧派、──というよりは善意の良識派──は、アメリカのような社会になってはならないのだと、彼らをディストピアとして提示しようとする。
そのアメリカに関して、おもしろい数字を幾つか見つけた:

  • 2005年、およそ4000万人のアメリカ人は住居を替える
  • 2030年には、5人に1人のアメリカ人はLatino/ラティーノになる
  • 現在の収入格差は、19世紀後半のGilded Age金ピカ時代と俗称される南北戦争後のにわか景気の時代──に匹敵するほどの空前の規模になっている
  • トップのほんの一握りが、アメリカの富を独占しつつある
    • In 1979-2000, the real income of the poorest fifth of American households rose by 6.4%, while that of the top fifth rose by 70% (and of the top 1% by 184%). As of 2001, that top 1% nabbed a fifth of America's personal income and controlled a third of its net worth.

Source: America's great sorting out/The missing rungs in the ladder Jul 14th 2005 From The Economist

能力によって収入やポジションの決まる社会をメリトクラシーと呼ぶが、アメリカの階級分断は、このメリトクラシーの機能不全ではなく、あまりにも十全に能力主義が機能してしまっていることに起因しているのだと記事は分析する。子供の能力を高めるために為された投資の額が多ければ多いほど、つまりは高所得者の子弟ほど、その親と同等もしくはそれ以上の高所得が約束される社会になりつつあるというのだ。
同様のサイクルは、日本でもすでに回り始めている:東大入学者の親の平均収入が他大のそれを引き離しているというエピソードは有名だが、ゆとり教育というオブラートに包まれた幻想に呑まれて低所得/低学歴の循環に世代的に嵌まり込んでしまう危険性を、文部科学省はまったく指摘していない。