Irving Kristol

ポール・クルーグマンが鋭い視点から宗教右派の及ぼすアメリカへの悪影響を論じている:科学でさえも、イデオロギーに左右されてしまうという弊害が、それである。クルーグマン曰く、ネオコンの祖たるアーヴィング・クリストルは、同時に、「インテリジェント・デザイン説」の祖でもあるのだという。インテリジェント・デザインとは、進化論の「最新」学説である;ただしこの学説は、アメリカの一部の学区でしか支持されていないのではあるが。その説曰く、生物の進化は、──ダーウィニズムの主張とは異なって──まったくの偶然によって引き起こされたにしては、あまりに精巧である。では、何がそれを引き起こしたのか? 偶然ではなく、何らかの知能が──「全知全能」の存在者を思わせるような仕方で──生物種の進化を誘発したに違いない、と。
 これは、見事な科学史観の書き換えである。クルーグマン曰く、宗教右派は、この学説を生物学界における主流にしようなどと大それたことを考えているのではない。彼らは、「混乱Confusion」を生じさせ、人々に一抹の疑念を与えることをこそ意図しているのだという。迷いが生じれば、既存のダーウィニズムを論難する素地が整い、ひいては、自勢力への引き込みが容易になるというわけだ。
 こうした学説とネオコンとをクルーグマンが結び付けたのは、次のような意図があってのことだ:サプライサイド経済学への熱烈な支持、予防的先制攻撃の論理などが、何の根拠もなく主張され、主流になってしまったのと同様、われわれはこのインテリジェント・デザイン説に鹹め取られつつあるのかもしれない、このことに警鐘を鳴らす意味が込められている。
Source:August 5, 2005/Design for Confusion
cf:The Economist/The peopling of the Americas /The plot thickens/Jul 14th 2005
このThe Economistの記事は、アメリカ人が──コロンブス到来以前のAmerindian、つまり先住民たちが──いったいどこからやってきたのかについても、科学史の書き換えが起ころうとしていることに注目している。

  • In common with some other faiths, Amerindian religions preach creation rather than evolution. One consequence is that many tribes believe they and their ancestors have occupied the same places since the dawn of time.
  • These ancestral humans[・・・]coasted around the northern Pacific Ocean over the course of several millennia. [One reseacher]suggests, on the basis of their anatomy, that they came from a homeland somewhere in the vicinity of South-East Asia.