:ネット右翼の文法【3】

エントリーのタイトルのなかに「ネット右翼」という言葉が含まれていることは印象操作にあたるとの指摘をいただいた。
筆者としてはネット上での長文は読むに耐えないと思っている。そのせいもあって、なるべく簡素に内容が把握できるような工夫の一環として、やや人目を引くようなエントリータイトルをつけたこと自体は自覚していたが、それで気分を害される方が出てくるのは、本来意図していたこととかけ離れた事態である。もし過剰な悪意をそこに感じ取られた方がいたなら、お詫びしたい。
誰しもがネット右翼のスタイルを模倣できるような、その語学の教科書を紡ぐことが本来の意図である。逆に、ネット左翼の人にとっては敵の急所を図解する助けにもなるかもしれない。ともあれ、双方が議論を高めあうその最低限の土台として、自らの言説スタイルに自覚的になることは好機ではないだろうか。
さて、2ch上で靖国参拝に関するおもしろいカテゴライズの仕方を見つけた:

靖国
├参拝すべきだよ派(すべき派)
│  ├大東亜戦争はアジア解放のための戦争だったんだよ派(A級戦犯は神様派)
│  ├護国の英霊の追悼は当然だよ派(英霊追悼派)
│  ├中国の内政干渉は許さないよ派(国家主権派)
│  └死んだら仏という日本の文化だよ派(文化不干渉派)
└参拝はすべきではないよ派(止めろ派)
    ├政教分離原則に反しているよ派(政教分離派)
    │   └靖国以外の国立墓地を作ろうよ派(国立墓地派)
    ├戦犯を追悼するなんてとんでもないよ派(侵略戦争の美化反対派)
    │   └A級戦犯分祀しようよ派(A級戦犯分祀派)
    └アジアの国々に配慮しようよ派(いろいろ配慮派)
         ├植民地下の将兵軍属は分祀しようよ派(外国人分祀派)
         └中国様には逆らえないよ派(中国隷属派)

非常に要領を心得た分類だと思うが、それでも上の図では、以下の二点が欠落してしまっている。
【α】靖国参拝に難癖をつけてくるのは主に中国、そしてアジア諸国だけであってその他地域はこの問題に関心を抱かないかのごとく前提されてしまっている:中韓がキャンペーンらしい外交戦略を発動するよりも以前から、欧米メディアのあいだではWar Shrineとしての靖国のイメージが定着してしまっていた。上図の「いろいろ配慮派」は、アジア以外の国々に対する印象に対しても配慮をすべきものとして、拡張されるべきである。
【β】あえてアジア諸国を──わけても中韓を──刺激し、怒らせるために参拝すべきだ、という見方は、どこに含まれるのだろうか? 「すべき派」の分派のなかに、「特段メリットはないことは自覚してるんだけど中韓怒らせようかな派」を加えて欲しい。 小泉内閣には、スキャンダルらしいスキャンダルがない(それゆえに長期政権たりえた)、という言い方がよくなされるが、それは違う。最大のスキャンダルたる靖国参拝を就任当初から行うことで、その他のスキャンダルを瑣末なものへと相対的に縮小することに彼は成功しているのだ。