:時代錯誤かつ最先端の。

New York TimesのJohn Tierneyのコラムで、アメリカについてのトリビアをまた仕入れた。
Source:June 7, 2005 A Chance to Escape
パブリックスクールで勉強についていけなかった子どもが、私立に転校することで学業に専念し、見違えるように自らの人生を改善していくことができるケースが少なからずあるのだとTierneyは言う。ならば、フロリダ州自治体としてそうした「転学」のシステムを経済的に援助することがあっても当然許されるのではないだろうか?
だが、フロリダ州最高裁はこの施策が憲法のとある修正条項に抵触すると判断した。なぜだろうか?理由については、下の引用を読んで欲しい。
私は時々、アメリカの「後進性」のようなものに驚かされることがある:アメリカ発祥であったはずの価値観が先進各国に浸透しきったその時期になって、今度はその当のアメリカで先祖がえりのようなバックラッシュが生じることが往々にしてあるのだ。たとえば、ゲイ同士の結婚について、現在最も容赦の無い反対を表明しているのはアメリカ社会である。価値観的に宗教保守のカトリックが支配的であると言われていたヨーロッパのほうが──スイスのゲイカップルへの権利一定付与の国民投票決定に見られるような──はるかにリベラルな価値観へとコミットしようとしている。もう一例あげるならば、しばしばアメリカは自由競争市場の唱道者であるかのように言われる。がしかし、現在もっとも強力に保護貿易主義を唱え、WTOの理念に反するようなFTA締結による貿易網の整備に精を出しているのもまた、アメリカなのである。
 世代がもう1つぐらい下ったなら、未来の若者たちに「昔はアメリカこそがリベラルの旗手だったのだ」と語っても一笑に伏されて信用してもらえないのではないかと思う。

  • Florida Supreme Court, they're arguing that the program violates Florida's version of the Blaine amendment, a prohibition on aid to religious schools that was added to many state constitutions in the 19th century thanks to campaigns by nativist politicians against the "Catholic menace."
  • It is an amendment with a "shameful pedigree," as the U.S. Supreme Court has noted. Florida adopted it at an 1885 constitutional convention that also banned interracial marriage and required segregated schools.

ほとんどのアメリカのプライベートスクールは、宗教色を色濃く打ち出している。それを盾にとって、学業的キャッチアップのためにそこで学ぶ学生への経済援助が憲法違反であると断じられてしまうのだ。
以下、最近報じられたアメリカ関連の情報を2つ:

米連邦最高裁は6日、カリフォルニアなど全米10州で州法により認められている医療目的マリフアナの使用について、連邦薬物規制法に違反しているとの判断を下した。これにより現在、マリフアナを使用している患者らが同法違反で訴追される可能性が出てきた。
Source:毎日新聞

  • 「生命の誕生や進化の背景には知的な計画があった」という「Intelligent Design(知的計画=ID)」説を学校で教えようという主張が、米国で頭をもたげている。米国では、旧約聖書の創世記に基づき、天地と人類は神がつくったとするキリスト教右派が勢力を保つ。そうした宗教右派の「進化論を学校で教えるな」という主張とは表向き一線を画しているのがID推進派の特徴だ。
  • CBSテレビが昨年11月に行った世論調査によると、米国人の55%は、神が人間をつくったと信じ、27%は進化の過程に神が関与したとし、全く神がかかわっていないとする人は13%にとどまった。

Source:朝日新聞

薄ら寒くなるのは、このアメリカの動きが「反動」なのではなく、時代の最先端を走ろうとする動きなのではないかとも思えることだ。他の先進国がアメリカの「半周遅れ」を笑っているかのように見えて、実は、アメリカこそが孤独に先頭を走っているのかもしれない。