:ローマ帝国【2】

Source:日経新聞2005年1月1日
ローマ帝国の興亡から、日本の少子化対策に活かすことのできる施策を学ぼうというこの企画、意外と力が入っていておもしろい。以下、要点を幾つか。

  • 首都ローマでは、庶民はアパート形式の集合住宅で暮らし、就業時間に当たる午前11時ごりろには市内に人込みが出現した
  • 首都の人口は共和政(BC510-27)後期から大幅に増加:地中海世界を征服するにつれて首都の人口も増え、共和政末期には100万人規模に達した
  • さかのぼって紀元前六世紀の王政期から、課税や徴兵のため戸籍を作っていた
  • 記録や遺骨、墓碑から推定される平均の寿命は男性20年,女性25年程度
  • 帝国の総人口は緩やかに増え続け、人口減が国家の衰退を決定づけたわけではないと考えられている

日本を脅かす2つの衰退論がある:1つが人口減による衰退、もう1つが外国人流入による衰退である。これがために保守派は若者や女性に「産めよ増やせよ」を──たいした根拠も無く道徳を振りかざして──奨励し、外国人の労働者や学生の流入を極度に制限しようとする。
当時のローマでは、幾つもの言語が飛び交い、幾つもの民族が共存していた。2000年を経た今なお、かつてのローマほどの異種混交の活力を呈している都市は見当たらないのではないかとも思う。
日本で就業しようとする外国人に日本語の習得を義務付けようとする的外れな議論が、いまだに日本では幅を利かせている:いまや、「世界の標準言語は英語になりつつある」などと私は言うつもりはない。なぜなら、すでに英語は標準言語になっているからだ。「英語が話せるか否か」はもはや焦点ではない;「どんなアクセントの英語を話すか」こそが焦点なのである。