:奈良の謎

日経新聞の今年一月の特集、「少子に挑む」を読み返している。

  • 都道府県別の出生率首位は沖縄の1.72
  • 最低は東京都0.9986

であるという。
沖縄の水準でも、「置換水準」には程遠い。

  • 全国平均は1.29
  • 1.5以上は沖縄・福島・鳥取・佐賀
  • 1.2未満は東京・京都・奈良

市町村別でみると、より鮮明な構図を得ることが出来る。98-2002年の平均で、

  • 出生率の最高は沖縄県多良間村:3.14
  • 上位三十位中、28市町村が九州・沖縄の島部などが占める
  • 最低は東京都の渋谷区:0.75
  • 下位十位のうち八つが東京都23区

記事の分析によると、「親だけでなく、地域の多くのおとなが子どもを育てる。九州・沖縄の島々ではそんな社会風習が色濃く残る」がゆえに、こうした高出生率が可能なのだと言う。記事中の言葉を使えば、「社会の子育て力」をいかに高めるか、それこそが現代の日本の課題の一端なのであろう。
 だが、同時に1つの疑念も浮かぶ:果たして、これらの島々での社会の子育て力と高出生率の関係は、本当に前者あっての後者の関係──時系列的かつ因果的な関係──として描写できるのだろうか?、と。周囲に子どもが多く見られ活気にあふれた社会こそが、子育て力を社会に涵養し続ける当の触媒になるのではないか、とも思えてしまうのだ。この解釈を採用するとなると、現代日本少子化の進展を止める手立ては、ますます想像しがたいものになるだろう。流砂に飲まれつつ、そこからの脱出の手立てを考案せねばならないのだから。