:憲法
平成16年5月12日の、憲法調査会公聴会をネットで見てみる。
小熊英二(公述人 慶應義塾大学総合政策学部助教授)の発言要旨のうち、いくつか骨子になる部分は以下の通り。
- 1946年、ホイットニー民生局長は天皇制存続と非武装化とのバーターを提示した。
- オーストラリアなど、連合国側からの天皇退位要求が高まっていた時節であった。
- 天皇制と資本主義を盛り込んでいたホイットニー案は、財界からも歓迎された。
- 50年代、朝鮮戦争に日本人部隊を派遣するよう、アメリカからの要請が高まった。(実はある程度の派遣があったことは、後に明らかになるのだが。)
- アメリカからの要請に、保守政界は割れた。朝鮮戦争の勃発に合わせ、警察予備隊、保安隊、自衛隊と拡張されていく日本の軍備は、アメリカの「傭兵」「番犬」であるかのようだ。
- 第九条は、アメリカからの要求を値切るために利用された。
- 46年のアメリカの圧力の産物を、50年代にはその圧力を跳ね返すものとして使った。
- 吉田茂「ずるいようだが、アメリカに当分日本の軍備をやらせておけ」
- 吉田は、左派社会党に再軍備反対運動の喚起を、密使を送って要請した。
- 9条を改正するのはアメリカの思う壺である By三島由紀夫→他のアジア諸国と同列の、アメリカの番犬になるにすぎない。
- Q: 九条改正は自主憲法に必須なのか?
- 三島案:第一条を改正し、天皇を現人神に戻すことこそ肝要。
- 小熊:国内世論の反対が強いからこそ、アメリカに「これほどのことをした」と恩を売ることができる。
- 自衛隊のイラクにおける位置づけが、ヴェトナム戦争時の韓国軍の位置づけになっていいのか?
- 日本の再軍拡を防ぐために米軍を置いておく、と考えているアメリカ人が49%
- 日本を守るため、と答えたのは、12%でしかない
- アメリカ政府は、九条改正を理解するかもしれないが、それは、アメリカの世論を刺激するかもしれない。
船曳建夫(公述人 東京大学大学院教授・文化人類学者)がこの調査会において述べたポイントのうち、幾つかを下に抜書きしておく。
- 日独伊は敗戦によって、「不良債権」ともいうべき植民地を幸運にも失った。そうでなければ、イギリスやフランスのように、戦後もその処理に苦しんでいたことだろう。
- 戦争はもはや、経済的・思想的に「割りに合わなくなった」。戦争によって土地・金・労働力を得ることは、長期的な衰退にしかつながらない。
- アメリカ人は──すべての先進国民は──、戦争ができなくなりつつある:命の値段が高騰しつつある。
- 兵士の側も、自分の命の損失と国家の利益との天秤が成り立つのかどうかを、シビアに検討する。なにも、その国家の内側だけで生きていかなければならないわけではない。
- かつて、植民地支配の潮流が変わり始めていた当時に日本はその獲得に乗り出したように、いま、世界が平和憲法のほうへ動いている時に日本が逆に動くのは、危険な賭けである。
- 世界が日本に追いついてくるのを待つのが得策ではないか。