:Osawa


吉本隆明の「グスコーブドリの伝記」論
宮沢賢治のこの童話は、吉本の「世界視線」をつまり超越的な上方からの視線を象徴的に集約したものとして読める。
Osawaは、吉本がここから宮澤賢治の二つのユートピア理念を取り出しているという。そのうち一つは、:「自然は人工的に作れること、さらにいえば自然よりも優れた自然が人工的に造成されうるという理念」だということだ。Osawaの議論は、こう続く。

つまり、理想的な自然が、自然からの超越(人工)の極限に出現するということである。ここで、理想的というのは、人間と自然の調和的な関係がたもたれている、ということだ。超越への意志は、視線の水準では、上方から俯瞰する視線(世界視線)を凝結するだろう。この宮沢の理念は、(資本主義的な)超越化の極限に、再び自然への内在が出現するはずだ、というわれわれの構図とも合致する。『資本主義のパラドクス』(p.331−2)