:スピリチュアリティ

人はアメリカを過度に宗教へと後退しつつある社会だと嗤うが、日本においても、──ずばり宗教そのものではなく──「宗教的なるもの」は徐々に社会に浸透しつつある:

  1. 「宗教を信じるか」という旨の各種の世論調査七割以上が「いいえ」と答えている
  2. スピリチュアルな世界はしばしば「ふるさと」と形容される
  3. 戒律・教義のある「宗教」;つながりと多中心性がキーワードの「スピリチュアリティ
  4. 島薗進教授は欧米のニューエイジ、日本の精神世界、そして世界各地の似たような現象を包み込む概念として、1991年から「新霊性運動new spirituality movements」という擁護を提唱している。また、一般社会との緊張関係が無く「運動」と呼べないような側面は「新霊性文化」と呼んでいる
  5. 米国では約一千万人がなんらかの形で瞑想を日常的におこなっていて、10年前に比べて倍増した。「社会の主流をなす人でいっぱい」になる瞑想の場所も多いという。『Time 2003 Aug 04』
  6. 20歳代の宗教観:「宗教を信じない」人は圧倒的(92%)なのに、「神仏はいない」と言い切る人は36%しかいない『読売新聞2001年12月28日掲載』
  7. スピリチュアリティは文化現象のなかでしばしば、断片化され、より見えにくい形で現れる:中越地震後にリクエストが殺到した平原綾香の『Jupiter』など
  8. 《特殊な領域に限定され、凝縮してあるような「特定宗教」のほうが、しばしば非宗教の相貌を露呈するのに対し、ひそやかに遍在する宗教は、科学・文学・思想・芸術など、あらゆる領域に浸出し、いたるところに拡散しながら、かえって宗教的純度を高めているように、私には見える》大村英昭現代社会と宗教』p25
  9. 宗教研究者の間で注目されているものに「道具箱tool kitとしての宗教」という考え方がある:人々は、宗教という道具箱から自分に必要な工具を選ぶことができるというのだ。この宗教観の変容は、テレビからインターネットへの、コンテンツ受容態度の転換になぞらえることができる
  10. 宗教が社会現象なのではなく、「社会のほうこそ宗教現象」ではないのか?大村前掲書、p10
  11. 2003年には小学生10人が自殺を選び、他方、2001年公開の「千と千尋の神隠し」の動員は2300万人を越えた

Source:朝日総研レポート 「スピリチュアルな『私』たち 上・下」2005年4-5月